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『中国商標法』カバーと帯 PP加工カバーに特殊材質帯(珍しいメタル光沢材質上に、スクリーン印刷)

『中国商標法』上写真のカバーと帯を外した本体装幀。特殊で繊細な白織地の上に金箔押。枇杷色の見返色、金色の花布、紺の栞の誂え。


『中国商標法 TRADEMARK LAW OF CHINA』  2025年6月30日発行 
A5版 上製本(ハードカバー) 金箔押し,746頁,985g,黄 暉(コウキ)著,知成堂
定価:8,100円+税 8,910円(税込)ISBN978-4-911415-01-6

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 本書は、中国国家商標戦略に携わるリーダーであり、中国とフランスの商標法博士である黄暉氏による商標法の包括的な教科書です。
 商標法の基本原理から実務まで、欧米法務や条約の観点からも体系的に解説されており、20年以上に渡り改訂を重ねられた定評のある原著第3版の待望の日本語完訳版です。
 著者の豊富な実務経験と学術的知見が凝縮されており、情報の限られている中国の商標法制度を深く理解するための貴重な一冊となっています。
 実務事例や著名商標の図示を多数収録し、理論と実践の両面から商標法を学ぶことができます。
 『民法典』『反不正当競争法』など関連法規及び司法解釈との関係性も明確に示され、事例索引も充実。746ページに及ぶ本書は、金箔押のハードカバー装丁です。
 中国の商標法の潮流、並びに世界的な商標法の潮流を同時に理解することが出来るもので、グローバルな視点で商標法を理解したい方に最適な教科書として位置づけられています。

出典:QRコードによるカラー写真表示の例,P366一部抜粋 「中国商標法」黄 暉, 知成堂

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●本書は、商標法の原理、制度及び運用を体系的に説明した教科書です。
著者は中国とフランスの商標法博士として、理論と実務の両面において実績があり、本書は著者の優れた学識と豊富な実務経験をまとめ、再現しています。

●本書は、歴史的な深さと現実的な関連性を併せ持ち、中国の特色と外国の経験を備えています。一方では、商標法の基本原理に立脚し、本分野の基礎概念、権利及び保護手段を組み合わせて、商標保護の制度体系を全面的に構築しています。
そして、多くの実務事例及び著名商標の図示を取り入れ、事例を交えて法律と理論を説明し、読者の法律分析能力を高めることを重視しています。

●本書は、商標法の学習と応用を核心的な目的とし、主に『民法典』、『反不正当競争法』及び商標法関係の新しい規範文書及び司法解釈を組み合わせ、書式を最適化し、重要な内容をより明確にしています。
さらに、事例及びキーワードの索引を作成し、事例への参照をより便利かつ効率的にしています。

●本書は、知的財産権専攻、各種専攻先での関連教育、独学及び研修用の本として利用することができます。

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 本書の著者の黄輝氏は、かつて中国の商標登録業務を遂行していた旧国家工商行政管理総局を経て、社会科学院において中国の知的財産法の草創期の研究者として著名な鄭成思教授に師事し、法学博士号を取得。その後、弁護士として活躍する傍ら、フランスに留学し、ストラスブール大学でも法学博士号を取得している。本書は、そのような筆者が長年の商標実務に携わった経験が存分に活用された中国商標法の実務的解説書である。その特徴は、以下の3点にまとめることができる。

 第一に、本書には、条文、公定解釈、裁判例など、中国商標法に関する情報が満載されている。とりわけ、中国では、最高人民法院が表明する司法解釈に代表される各種公的機関が策定する指針等は、日本の行政組織が出す各種審査基準やガイドライン等と異なり、その後の裁判実務がこれに従うことになるので、個別の裁判例以上に重要である。本書は、そうした各種公的機関による複雑多岐にわたる各種指針を丁寧に解説している。裁判例についても、単に判決文の抽象論を抜き出すのではなく、原則として、具体的な事案を紹介したうえで、裁判所の判断が示されており、紛争の核心をつかみやすい。

 第二に、本書には、パリ条約やTRIPS協定に代表される各種国際条約はもとより、主要な論点に関しては、必ずといってよいほど、EU指令や欧州司法裁判所の裁判例、ドイツ、フランス、アメリカ合衆国の法律や裁判例が簡便に紹介されている。こうした各国法に関する情報はそれ自体として実務的な価値が高いことはもちろんであるが、それが中国商標法を理解するうえでも望まれるということなのであろう。中国はパリ条約加盟が1985年、TRIPS協定加盟が2001年であることに代表されるように、諸条約成立後、相応の時間が経過した後に加盟したために、各国の実践例を参酌したうえで商標法を改正する機会に恵まれていたという経緯も預かっていると推察する。そのうえで、中国が加盟していない商標関連条約に関する情報も収められていることは、それらの条約に関する態度決定に資する情報をも供給しようとする筆者の心意気を示すもといえよう。

  第三に、本書は、これらの中国商標法における実践をそのまま受け止め、客観的に叙述するというスタイルを採用しており、そのことが本書の実務的な価値を高めている。他方、そうした実践例の意義を解説する際には、ときとして言語学や心理学などにも踏み込んでおり、そこに筆者のこれまでの商標法に関する研究の息吹を感じることができる。

  以上のような特徴を有する本書は、「中国商標法のエンサイクロペディア」という称号を与えるにふさわしい。ここに推薦する次第である。

東京大学教授 田村善之

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 著者の黄輝氏とは、7年前のINTA年次大会において、ある共通のクライアントのOutside Counsel Meetingにおいて初めてお会いしました。そこで黄暉氏は、全世界のOutside Counsel Meeting向けにプレゼンテーションを行っており、世界の商標法の深い理解に基づいたその発表内容や深い洞察力に感銘を受けたのを覚えています。

 本書は、そのような中国の知的財産法の最前線で活躍するリーダー的存在である黄暉氏によるもので、ダイナミックに変化する中国の商標法を理解するための最良のガイドの一つです。

 本書では、商標法の歴史的背景から始まり、商標の進化や機能、現代社会における役割について詳述するとともに、中国の商標立法の沿革や国際協調の進展にも触れています。これにより、中国の商標法がどのように国際的な調和を遂げてきたかを理解することができます。

 また、中国の商標実務は日々変化しており、数多くの裁判例や公的機関による指針を含め、日本の商標実務者がすべてを把握するのは容易ではありません。本書は、商標法における主要な論点を網羅し、体系的に整理したうえで、中国の最新事例にも対応した実践的な内容となっています。そのため、日本の商標実務者にとって、ぜひ手元に置いておきたい一冊です。

 今後も中国の商標法は国際的な協調と調整を通じて発展を続けることが予想されます。黄暉氏による本書は、将来の法改正や制度の進化を見通すうえでも示唆に富んでおり、日本の商標実務者のみならず、中国の商標法を深く理解したいすべての方にとって「必読の書」と言えるでしょう。

TMI総合法律事務所パートナー/日本商標協会事務局長
弁理士 佐藤俊司

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日本語版に寄せて(注釈)

 本書は、中国の数多くの大学で商標法の専門教材として選定されてきた名著「商標法」黄暉 著(中国版)の第三版を完訳し、日本における初版として出版いたしました。以下は原著の第三版・第二版・初版の序文です。

第三版の序文

 商標の年間出願件数が1,000万件に迫る中、2019年に『商標法』は第4次改正を迎えました。今回の改正では、使用を目的としない悪意のある商標登録への取締りが特に強化されました。実施条例は対応して改正されていませんが、2013年以降、商標に関連する司法解釈、規則、政策、および主管官庁や審判体制はどれも大きく調整され、様々な判例も次々と登場しており、これらはいずれも本書の改訂に際して契機と推進力を与えてくれました。

 まず、商標の主管官庁に大幅な調整がなされました。商標局、商標審査委員会、および商標審査支援センターは新たな商標局に統合され、商標局はかつての国家工商行政管理総局から国家知的財産権局に移管されました。そして国家知的財産権局は新設された国家市場監督管理総局の傘下となりましたが、2023年3月には再度、国務院直属機関へと再編されました。各地の商標行政法執行部門もそれぞれ異なる程度で再編されています。また、国家知的財産権局は『商標権侵害認定基準』、『商標一般違法行為認定基準』、および『商標審査審理ガイドライン』などの規範的文書を相次いで公布しています。

 次に、『民法典』の可決、『不正競争防止法』および三大訴訟法(民事訴訟法、行政訴訟法、刑事訴訟法)の相次ぐ改正があり、商標訴訟の司法管轄の階層にも変化が生じています。裁判所による簡易・通常訴訟の分流、四級裁判所の再編、法適用の統一、検察院による知的財産権の法的監督強化なども、商標の司法的保護に直接的な影響を及ぼしています。商標の権利付与・確定、行為保全、懲罰的損害賠償、悪意のある権利行使への抑止、不正競争防止、管轄などに関する一連の司法解釈の公布も、さらに商標保護の形態を形成しています。多くの商標に関する注目事件も、社会的な関心を広く集めています。

 また、2015年に欧州連合における商標指令および条例が大幅に改正されて以降、各国および国際的な商標法立法、特に欧州における商標立法において、商標登録および保護の方向性にも大きな調整が見られます。国際的な知的財産権立法も活発に動いており、重要な知的財産権の国際条約や二国間・多国間協定の公布・発効が相次ぎ、海外における商標保護の環境にも深刻な変化が起きています。

 さらに、国家として『知的財産権強国建設綱要(2021年~2035年)』を打ち出し、2023年1月には国家知的財産権局が第5次改正草案を公表しました。そこには、商標使用義務の強化、商標登録手続の最適化、商標保護範囲の拡充、地理的表示の保護ルートの明確化などの論点が含まれており、業界内でも継続的に注目を集めています。

 本書は、商標に関心を持つ読者の皆様に、国内および国際的な商標保護の知識構造と基本的なアプローチを理解いただくことを目的として執筆されていますので、言語表現においては簡潔明瞭を旨としています。第1版および第2版と比較して、第3版では構成自体に大きな変更はありませんが、譲渡および使用許諾に関する内容を商標登録の終了前に移動し、商標管理の章は商標保護の後に再配置したうえで、コンプライアンス管理とブランド戦略の企画に関する内容を新たに追加しました。また、域外商標法に関する章を最終章に移しました。

 本書は、大きく5つの部分に分けることにより、構成の論理性をより明確にし、内容の均衡を図っています。第一の部分は第1章から第3章までであり、商標の基本的な概念、構成要素および保護の実体的要件を主に紹介しています。第二の部分は第4章から第6章までで、商標登録の取得、流通および終了に関する手続的事項を重点的に説明しています。第三の部分は第7章から第9章までで、商標専用権の効力、制限および主要な救済手段について重点的に紹介しています。第四の部分は第10章から第12章までで、商標管理ならびに著名商標、団体・証明商標および地理的表示に対する特別な保護について述べています。第五の部分は第13章から第15章までで、順を追って商標の国際登録、商標に関する国際条約、および域外における商標法を紹介しています。

 今回の改訂では、第2版以降の商標体系のさまざまな変更を反映させただけでなく、第7章「商標専用権の効力」の執筆を重点的に強化しました。とりわけ同章の第1節「商標専用権の性質および先行権との関係」については、特に力を入れて記述しています。ある意味では、この問題の複雑さは重慶の黄桷湾にある盤龍立体交差橋に匹敵すると言っても過言ではありません。商標専用権および関連する各種の先行権がこの「立体交差橋」をスムーズかつ効率的に通過できて初めて、商標法の立法趣旨が真に実現され、経済および社会の発展に資することができるからです。また、第1章では商標立法における10の基本原則を再整理し、商標法と他の学問分野との関係についても新たに加筆しました。第7章および第11章では、通常の商標における混同の可能性と著名商標における連想の可能性の総合的判断について強調しています。第14章には、中国が締結または加入している最新の地域的・二国間商標条約を追加しました。第15章では、2015年に改正されたEU商標法の概要を新たに加えるとともに、韓国の商標法についても紹介しています。さらに、第3版では初期の行政回答や判例の一部をあえて残すことで、関連問題の経緯を理解する手がかりとしていただけるように配慮しています。

 本書の記述形式についても若干の調整を加えました。とりわけ、主題となる段落にはゴシック体を使用することで視認性を高め、また参考文献も更新し、国内外の最新判例を追加し、典型的な事例の紹介に力を入れました。さらに、関連する判例については脚注において可能な限り『中国商標および不正競争判例要点』または『中国商標レポート』における掲載ページを明記し、併用しやすくなるよう工夫しています。改正中または廃止予定の法規を含む、より多くの法規については、WeChatミニプログラム「万慧達文庫」を通じて検索することが可能です。読者の便宜を図るため、本書には特別に判例およびキーワード索引を付け加えました。

 今年は『商標法』の施行40周年にあたり、清朝が中国で最初の商標法を公布してからおよそ120年、香港が世界で初めて登録主義に基づく商標法を公布してから150年、そしてフランスが世界で最初に商標法を制定してから220年の節目にあたります。現実世界においても仮想世界においても、商標法はますます重要な役割を果たしており、すでにメタバースや宇宙空間における商標保護についての議論さえ始まっています。宋代の学者・徐鍇は「標とは表す意なり。『春秋左氏伝』には道の傍らの樹を道標とし、遠くよりその標を見て道を知るとある」と述べています。このことからすると、「標」とは木の末端の部分にすぎないように見えても、これを識別できなければ「道」を知ることはできません。商標とは、知識経済および知的財産における「道」を示すものであり、片時たりとも忘れてはならないものです。また、『呂氏春秋・察今』に記されている「楚人が川を渡る際、古い標に従ったために誤る」という逸話は、我々に商標法の改正や研究においても、時代の変化を見据え、革新を重ねていく必要があることを強く示唆しています。

黄 暉
2023年7月17日

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【目 次】

第 1 章 商標及び商標法
第 2 章 商標登録の要素
第 3 章 商標登録の要件
第 4 章 商標登録の取得
第 5 章 商標登録の流通
第 6 章 商標登録の消滅
第 7 章 商標専用使用権の効力
第 8 章 商標専用使用権の制限
第 9 章 商標専用使用権の保護
第 10 章 商標管理
第 11 章 馳名商標
第 12 章 団体・証明商標及び地理的表示
第 13 章 商標の国際登録
第 14 章 商標に関する国際条約
参考文献
事例インデックス
キーワード索引

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<著者紹介>

万慧達知識産権 管理委員会メンバー/パートナー 
黄 暉

万慧達知識産権 管理委員会メンバー/パートナー 黄 暉

黄 暉 (コウ キ)
 1990 年に外交学院を卒業後、旧国家工商行政管理総局に 12 年間勤務した。この間、フランスのストラスブール第三大学国際工業所有権研究センター(CEIPI)に留学し、国際工業所有権研究を修了した。その後、中国社会科学院の鄭成思教授に師事し、商標法及び知的財産法の研究を行い、2000 年に法学博士の学位を取得した。さらに、イヴ · ルブール(Yves Reboul)教授に師事し、2018 年にフランスのストラスブール大学において法学博士の学位を取得した。
 現在、万慧達知識産権パートナー、管理委員会委員、国家知識産権専門家諮問委員会委員、中国法学会知識産権法学研究会理事、中華商標協会マドリッド工作委員会主任、北京君策知識産権発展センター副理事長、曁南大学客員教授など、中国の知識産権の第一線で活躍するリーダー的人材である。
 主な著書に、「馳名商標と著名商標の法的保護」、「商標の保護範囲に対する商標使用の影響―中欧商標法の比較研究」(フランス語版)、「中国の商標及び不正競争事件の要点」、「鄭成思の知的財産に関する文集」(執行編集委員)、「EU 知的財産法」(共著)、「フランス知的財産法典(法律編)」(共訳)、「中国商標報告」(第 1~12 巻)、「中国商標四十年 1978~2018」(執行編集長)、「国際知的財産発展報告」(共編)、「国際知的財産保護の典型事例集」(共編)など。また、多くの学術プロジェクト研究を企画、参加し、中国語、英語、フランス語の専門論文を多数執筆した。
 国際的に有名な法曹評価機関である Chambers の中国地域知的財産業務優秀個人(2011 年~2013 年、2017 年~2025 年)、「世界商標評論」(World Trademark Review)中国地域商標業務優秀個人(2011 年~2025 年)、「世界商標評論」(World Trademark Review)中国地域 WTR グローバルリーダー(2020 年~2024 年)、「知的財産管理」(Managing Intellectual Property)中国地域 IP スター(2015~2025 年)、Legal 500 アジア太平洋地域特別推薦ランキングの推薦弁護士(2015~2025 年)、「アジア法律評論」(AsiaLaw)中国地域知的財産分野の優秀個人(2016 年~2025 年)など国際的に有名なメディアの専門ランキングにも数多く選出されている。