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『知財界人物列伝』装丁画部分 <垂桜花筏椿図絵>の一部(大樹七海 作)
『知財界人物列伝』装丁画部分 <垂桜花筏椿図絵>の一部(大樹七海 作)

 本書『知財界人物列伝』は、知的財産の世界において確かな足跡を残した人物たちの軌跡をたどり、その思想と実践に光をあてる記録集です。
 刊行に先立ち、本書の企画趣旨について、「はじめに」より一部を抜粋し、ご紹介いたします。


 わたしたちは、幼少期から『偉人伝』にどこかで触れ、その生きざまに少なからず影響を受けてきました。

 偉人で思い浮かぶのは、『科学者の伝記』、『経営者の伝記』、『芸術家の伝記』、というのがあるでしょう。彼ら彼女らは新たな価値を創出するトップ・プレイヤーに近いと思われますが、知財界の人物というのは、その卓越したプレイヤーを世の中に送り出すために、必死で伴走し、彼ら彼女らが、危険極まりない道なき道を、より速く、より快適に走れるよう、その環境を、地道に、入念に、ときには先回りして、ときには傷を共に背負いながら、整備を行っていく、人類先端の創造活力の生死を共に握る、究極のサポーターに近いと思います。

 こうしたサポーターの努力と知恵と勇気、その献身なくして、「世界に影響を与える功績」というものは創り出せません。この極めて重要かつ、当たり前のことについて、このサポーターの果たす役割の偉大な効果について記す今までにない新たなジャンルを設けるものとして、ここに『知財人の伝記』である『知財界人物列伝』を創設します

 知的創造活動の目指す道は、

  • 1.どのような世界的な時代のニーズに、
  • 2.どのような課題認識を挙げ、
  • 3.どのような着眼点から、
  • 4.どのような具体的なアイデアによって、
  • 5.どのように困難の克服を試み、
  • 6.どのように実現できたのか、

という道に思います。

 知財界は、こうした知的創造活動を支える立場にある、あるいは牽引していくこともある立場にいるひとたちが所属しています。

 同様に上記の文脈に沿う多岐に渡る支援活動の記録を、ここに記し遺すことにより、後世において、多岐に渡る類似の課題・困難なる事態、未来に向かって歩むべき道を模索するに際し、最適な課題把握力、設定及び検討能力を高め、解決のアイデアや工夫のヒントを得て、困難に立ち向かう勇気、限界突破の意志を持つことのできる、アーカイブとして遺します。

 「知財界全体の記憶」たる壮大な知的財産として、継承していくことを目的とするものです。

 いつの時代にも、「開拓者」と呼ばれる人がいます。

 往々にして、開拓者というのは、一部の人にしかその重要性を認識されない、理解して貰えないものですが、彼ら彼女らは、その大きな目的のために、人生を費やします。そうして幾年にもかけて踏み均され、開拓の終わったところに、人々が入植して、豊かに暮らすことが出来て行きます。

 知財の支援者というのは、常に、「開拓者の最大の理解者であり、味方でありたい」、と願うものです。

 いつの時代でも、困難を突破していくのは、政府でも、企業でも、団体でも、そうした不明瞭な主語ではなく、人です。あなたや私です。

 開拓者、支援者、理解者、整備者、継承者、これら荒地を造成していく「個々人の力」によって、百年前は、十年前は、昨年は、昨日は、「不可能・未踏領域である」と思われたことが、「可能・到達可能な領域である」、と変化を遂げていくのです。

 個人史を紡いでいけば、自ずとそれは、その人の属性に従うところにより、様々な世界の歴史を知ることに繋がります。

 科学技術に携わる人生史であれば技術史の一部となり、事業の観点から見れば事業史となり、司法・立法・行政に携わる人生史であれば政策史の一部となり、文芸・学術・美術に携わる人生史も含めて、総体的にそうした個人史の集積が文化史ともなります。

 ここにおいて、そうした個々人の幅広い活動を、あまねく包含していくことにより、豊かな知財のひろがりを数多の人生により疑似体験していくことは、知財界の活力をダイナミックに、リアルに感ずることとなり、刺激となり、創造力と活動領域を拡げ、いよいよ勇気づけられるものとなるでしょう。

 身近な先輩として、日本の知財界の偉人からはじめることになります。しかし、みなさんご承知のことながら、知財界は世界と繋がっています。おのずと、日本に留まることには、ならないでしょう。

 ただ、本書のようなジャンルが、日本で最初に刊行されることからわかるように、日本という独創的な環境から、人類先端の創造力の成育を、知財重視の観点から、どのように実現していくかを模索した成果は、世界にとっても、大いなる参考となり、そうして影響を与え、また諸外国からも影響を与えられる相互の作用により、より望ましい知財の潮流を創り得るものと思えます。

 尚、装丁に表現した日本の独創美は『装丁の解説』に譲ります。

 本書は、知財人の才気と勇気を『称える書』であると同時に、未来の道標となりうる、『継承の書』です。あなたの人生の一部となることを、願っています。

大樹七海 拝